一人親方が建設業を営むなら加入しておきたい建設国保とは?

建設業を営む方が加入する公的保険には、社会保険以外に建設国保があります。

公的保険は、従業員が働く上で抱えるケガや病気のリスク、また、出産や育児、介護、障害、失業、老齢、死亡といったいろいろなリスクに対して最低限の生活を保障するためのものです。

国土交通省では社会保険未加入の建設事業者の存在を問題視していますが、協会けんぽが運営する社会保険でなくてもよい場合もあります。

建設業を営む場合に社会保険に加入しなければならないケース

一般的には健康保険と厚生年金保険が社会保険、労災保険と雇用保険は労働保険として扱われています。

法人の場合、社会保険は1人でも雇用すれば加入義務が発生し、個人事業主であれば常時5人以上雇用しているのなら加入しなければなりません。

小規模の事業者などが社会保険への加入を敬遠しがちになるのは、負担する保険料は加入する本人だけが負担するのではなく、労使折半といって事業者も半分負担することが必要だからでしょう。

ただ、仮にパートタイム労働者であっても、労働日数や労働時間が乗用雇用者の約4分の3以上であると判断される場合には加入することが必要です。ただ、1か月以内の日雇い労働者や、2か月以内の期間労働者などは加入しなくてもよいとされています。

すでに建設国保に加入している場合は?

なお、すでに建設国保に加入している被保険者の場合、法人を設立、または常に5人以上雇用する個人事業主となっても、その事実が発生してから14日以内に健康保険適用除外の承認を受ければ、そのまま建設国保に加入しておいても問題ありません。

この取り扱いは、すでに建設国保に加入している個人事業主や一人親方などが適用されるものなので、法人や常時5人以上雇用している事業所が新規で建設国保に加入することはできないので注意しましょう。

一般的な国民健康保険よりお得?

建設国保は一般的な国民健康保険よりも発生する保険料が低めです。

一般的な国民健康保険の場合、前年度の総所得金額から給与所得控除や基礎控除を差し引いた金額を基準に、均等割や所得割を算出して合計した金額を保険料とします。

しかし建設国保の場合は、業態と年齢や家族数により決まるため、所得連動がないことが特徴です。一定の所得以上稼ぎがあるという場合、一般的な国民健康保険よりも安く加入できますので、個人事業主や一人親方の方で将来法人を立ち上げることや人を多く雇用することを検討しているのなら、加入を検討するとよいでしょう。

建設国保と一般的な(市町村)国保は何が違うの?

職域国保という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ここでは、その中でも当支部へ問い合わせの多い建設国保と市町村国保の違いについてわかりやすく解説したいと思います。この記事を読んでいただくことで、ご自身がどちらの国民健康保険へ加入するべきか選択基準になれば幸いです。

国民健康保険とは

国民健康保険は『職域国保』と『市町村国保』の大きく分けて2つに分類されます。

職域(建設)国保

職域国保とは、国民健康保険法に基づいて運営され、医師・弁護士・土木建築業者・理美容師など地域の同業者が設立する国民健康保険組合が行う組合国保です。

市町村国保

市町村国保とは、国民健康保険組合や職域保険に加入していない個人を対象として市町村・特別区が行う市町村国保です。

次に、双方の保険料の仕組みについて下記表で説明していきます。

「協会けんぽ」と「建設国保」、どちらがお得?

ここで、2つの社会保険制度である「協会けんぽ」と「建設国保」について、それぞれ説明しましょう。

「協会けんぽ」とは?

協会けんぽとは、従業員が5人以上の個人事業所や法人に対して加入が義務づけられている社会保険です。

すでに被保険者(従業員)が建設国保に加入している場合、「協会けんぽ(健康保険)の適用除外」を申請して承認を受ければ、例外的に建設国保に加入し続ける方法も選択できます。

適用除外を受けていれば、国土交通省の加入調査も問題ありません。

「建設国保」とは?

建設国保は、個人事業主や一人親方などが対象になる保険制度です。 協会けんぽと違うのは、被保険者が個人として加入することになる点です。

保険料率の違いに注意

協会けんぽと建設国保の間にある大きな違いは、保険料の支払いです。 協会けんぽと建設国保では、保険料率と補償内容が以下のように異なります。

35歳の正社員で月給28万円、介護保険非適用で妻の扶養がある人と仮定しましょう。

〈協会けんぽ〉東京支部の例

保険料負担:会社が約14,000円/月、従業員が約14,000円/月

病気入院などへの補償:約6,200円/日(最長1年6ヶ月)

〈建設国保〉東京土建の例 保険料負担:従業員が約21,000円/月

病気入院などへの補償:約4,000円/日(最長6ヶ月)

負担額や補償内容については、全国どこの健康保険組合に加入するのかで変わります。 自分の会社が所在する場所の組合に確認してみましょう。

最大のポイントは、「会社側の負担」の有無!

2つの保険制度の最大の違いは、保険料を会社が払う必要があるのかどうかです。

すなわち、協会けんぽは従業員の保険料を会社側が折半する必要がありますが、建設国保は従業員の負担だけでよいという違いがあります。 基本的には、協会けんぽのほうが、建設国保よりも手厚い補償があります。

特に、妻や子どもといった被扶養者がいる場合の給付は、協会けんぽのほうが充実している傾向にあります。国保には、「扶養」という観点があまりないのです。

どちらを選ぶべきか?

以上のことをふまえると、「会社がお金を払わなくていいなら、適用除外を受けて国保にしたい」と考える経営者は多いかもしれません。

しかし、保険制度の選択については、メリットとデメリットの双方を勘案して総合的に判断したいところです。

まず、入院などへの補償について、国保の補償は手厚いものとはいえません。 入院した場合の費用を全額賄うのには心もとないですし、入院期間が半年を過ぎれば補償は止まってしまいます。

従業員の側からすれば、何かあった際のリスクをカバーするためには、民間の保険に加入するなど自分たちで対策する必要があるでしょう。 協会けんぽを選択したほうが従業員には優しく、会社への忠誠心を高める助けになるかもしれません。

人材採用に影響する可能性にも注意

さらに、保険制度の選択が人材採用にも影響する事実を認識しておきましょう。 労働者の権利が世の中で強く意識されるようになった昨今の風潮として、従業員の社会保険料を払えないような財務体質の会社に対する風当たりは、かなり強くなっています。

特に若手や女性の採用を積極的に進めたい場合、保険が国保であるせいで応募者から敬遠されてしまう可能性は十分に考えられます。

確かに、小さな建設会社はかつて国保が普通で、「会社が従業員の保険料を払うなんてありえない」と公言する建設業経営者も多く存在しました。 しかし、時代は変わりました。もはや、「中小の建設業は国保が普通」といったような古い価値観で誰もが納得してくれる時代ではないのです。