一人親方と個人事業主の違いとは?
一人親方は個人事業主の一つの形態なんですが、その違いは?と言われるとなかなか説明するのが難しいです。
一人親方と個人事業主を同一視して取り扱う場合もありますが、厳密には両者は異なります。
例えば、一人親方は使用者を雇用せずに一人で現場をまわしますが、個人事業主は使用者を雇用して現場をまわしたりします。
一見して、使用者を雇用するかしないかの違いだけに見えますが、そこには社会保険加入などの様々な諸問題をはらんできます。
そのため、一人親方と個人事業主を同一視すくことができない、一人親方には個人事業主と明確に異なる部分があります。
一人親方と個人事業主の違い
一人親方と個人事業主を同一視して取り扱う場合もありますが、厳密に言うとそれぞれ異なります。
それぞれの定義として、一人親方が「労働者を使用せずに常態として単独で事業を行う者」とされ、個人事業主は「法人とせずに、個人の資格で単独に事業を行う者」とされます。
たとえ家族(配偶者や子)でも、毎月給与を支払っている場合は「一人親方」ではなく、個人事業主になります。
一人親方の定義
※ここでは、主に建設関連の業務に従事している人に限定して解説します。
- 労働者(被雇用者)を使用しないで事業を行う方を「一人親方」と言います。
- 基本的に本人が一人で仕事をしています
- 人に給与を支給して雇う日数が年間99日以下(外注を除く)
- 特定の会社に所属していても雇用ではなく個人請負として仕事をしている
- 親方の下で弟子、見習いとして働いていても親方との雇用関係はない
- 何人かでグループを組んで仕事を請け負った場合でもお互いに雇用関係にない
一人親方の判断基準として、「労働者を使用せず」「常態として」「単独で」「請負事業を行う者」となります。
さらに細かいところまで言うと、元請から工具の提供を受けず(材料や重機などは元請のものを使う)自前で用意した工具類を使う、元請から時間や休日、仕事の細かいところまで指示されるなどの詳細な拘束を受けずに自分の裁量で決められる状態で下請け仕事をするのが雇用に当たらないことを証明する純粋な意味での一人親方です。
個人事業主の定義
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人「組織に属さず個人で事業を行う人」のことです。税務署に「開業届」を提出して事業の開始を申請すれば、個人事業主として独立したことになります。
業種は何であってもよいです。個人事業主の例として、「一人で作品を制作するイラストレーター」「店員を雇ったり、家族で経営している飲食店の事業主」など、なんでもOKです。
個人で営業しているが本人が現場で仕事をする必要はありません。
事業とは反復・継続・独立している仕事のことをいいます。
反復とは、その仕事を繰り返して行うこと、例えば、小売業であれば、商品を取引先から仕入れて、お客に販売するという行為を繰り返して行います。
継続とは、その仕事をずっと行うこと、家にある品をネットオークションなどで販売する行為は、その1回だけの単発ですので継続とはいえません。この場合、事業には言いません。
独立とは、組織の所属していないこと、サラリーマンは会社という組織に所属し、給料をもらっています。この場合も、事業とはなりません。
人に給与を支給して雇う日数に制限もありません。例えば一人親方の場合は年間99日間以下など、制限がありません。
事業主が一人とは決まっていません
従業員(労働者)を雇用することができる
従業員(労働者)を雇用する人数に制限はない
従業員(労働者)へ給料として支払うことができる
社会保険は、国民健康保険(市町村国保や国組合)、そして国民年金であり、厚生年金や協会けんぽ等の制度へは加入できない
もちろん、雇用されていないので雇用保険には加入できない
例えば、コンビニエンスストアのフランチャイズ店の経営者などが分かりやすいと思います。
一人親方の皆さんは労災保険への特別加入
一人親方にしか認められていない特別な権利があります。「一人親方労災保険」は、その権利のうちの1つです。
労災保険は、文字通り「労働者」を対象に業務中や通勤上のケガや病気、障害などに対して保険給付をする役割があります。一人親方は労働者ではないものの、通常の労働者以上に業務中のケガのリスクが高いことなどから、労働者に準じて保護することがふさわしい一人親方の皆さんに、特別に労災保険の加入が認められています。一人親方が労災保険に加入するにあたっては、労働局が承認した「一人親方労災団体」を通して申込手続きをする必要があります。