建設工事現場の労災保険とは……建設現場では、元請会社の労災を使う?

工事現場の労災保険(労働者災害補償保険の略称です)とは…

労災保険は、労働者が業務上の事由または通勤によって、負傷したり、病気になったり、あるいは不幸にも死亡された場合に、被災労働者や遺族に対して必要な給付を行う国の制度です。
労働者とは、事業又は事業所に使用され、賃金が支払われるすべての方をいいます。

  1. 事業主の指揮命令のもとで仕事をしている、
  2. 労働時間が管理されている、
  3. 出勤簿と賃金台帳がある、

という方を1人でも雇えば、事業主は、加入手続を行い、保険料(全額事業主負担)を国に納付することになっています。

建設業では元請工事(お施主さんと直接請負契約をした工事)の現場ごとに労災保険を掛け、下請の労働者も含めて加入手続を行い、保険料を納付します。これを工事現場の労災保険といい、略して「現場労災」といいます。

つまり、現場ごとにおいて各下請会社を元請会社と一体とみなし、工事現場全体が一つの事業体として取り扱われます。

この事業体(建設現場)の労災保険加入手続きは、原則として元請会社が行う事になっており、保険料の納付の義務も現場ごとの元請会社が負う仕組みになっております。(雇用保険、事務所労災、社会保険(健康保険・厚生年金)等は個々の会社、事業での手続きや保険料納付が必要です。)

現場全体が一つの事業体として扱われますので、現場作業にかかわる事故が起きた場合、元請会社、下請会社に使用される全ての労働者(事業主、役員、一人親方等を除く)は、元請会社が加入する労災保険で補償されます。

尚、元請会社が加入する労災保険は、その現場に関わる各会社の労働者の業務上、通勤途上の災害について給付を行うものであり、事業主や役員、一人親方等は、労働者ではないために元請会社の労災保険では補償されません。

※ 元請会社とは工事の発注者から直接工事の仕事を請け負う業者のことであり、元請会社から工事の部分的な施行を請け負う業者は下請会社という。一人親方とは労働者を雇用せず一人で事業を行う方をいう。

しかし、各会社の中小事業主や役員、家族従事者、一人親方においては、労災保険特別加入制度を利用する事で労災給付を受ける事ができます。

【事業主】に当てはまる中小事業主労働保険事務組合に労災手続きを事務委託している
【一人親方】に当てはまる方一人親方の労災を取り扱う団体、組合に加入する
【労働者】に当てはまる方雇用されて働く労働者は元請会社が加入する労災保険で補償されます。

特別加入制度について……

国の労災保険は、労働者の業務または通勤による災害(これを一般的に労災事故といいます)に対して保険給付を行う制度ですから、事業主・自営業者・家族従事者など「労働者でない者」は、制度の対象にはなりません。
しかし、業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の人には特別に任意加入を認めています。これが特別加入制度で、下記の2つの入り方があります。

  • 中小事業主の特別加入=労働者を常時使用する事業主、家族従事者、法人の役員等
  • 一人親方の特別加入=労働者を使用しない一人親方、家族従事者

注)労働者を通年雇用しない場合であっても、年間100日以上労働者を使用している場合には中小事業主になります。
中小事業主の特別加入は、労災保険の事務処理を労働保険事務組合に委託し、特別加入申請書を提出し、国から承認を受けることが必要です。承認を受けた方を特別加入者といいます。

建設業は3つの労働保険の加入が必要で、受けられる給付内容が違います。

① 工事現場の労災保険(※元請事業主が加入します。)

~建設工事現場の労働者が業務上や通勤途上に災害が起きた場合に必要な給付が受けられます。

② 工事現場以外の事務所や作業場の労災保険(※元請・下請事業に関係なく従事する労働者がいる場合は加入します。)

~建設工事現場以外の業務を行う労働者が業務上や通勤途上に災害が起きた場合に必要な給付が受けられます。
工事現場以外の業務とは次のとおりです。
• 工場や作業場で(特定の現場のものでない)製品をつくる
• 作業場や資材置場で片付け、整理、道具の手入れ
• 営業、事務業務(会社の経理等)

③ 雇用保険(※元請・下請事業に関係なく、該当する雇用保険資格者がいる場合は加入します。)

~労働者が失業した場合に必要な給付が受けられます。

労災保険料の算定方法

① 工事現場の労災保険

  •   ア)工事に従事する全ての労働者(下請・孫請等の労働者含む)の賃金総額が把握できる場合
        ~賃金総額に労災保険率を乗じて算定します。
  •   イ)工事に従事する全ての労働者(下請・孫請等の労働者含む)の賃金総額の把握が困難な場合
        ~事業の種類ごとに定められた労務費率を用いて計算した人件費相当額に労災保険率を乗じて算定します。

② 工事現場以外の事務所や作業場の労災保険

  •   ア)営業・事務専任の労働者の場合
        ~営業・事務専任の労働者の賃金総額に労災保険率を乗じて算定します。
  •   イ)工事現場と、工事現場以外の業務(営業等)との兼務の労働者の場合
        ~業務日報・出勤簿などで、それぞれの就業時間を分けて記録し、工事現場以外の業務に係る賃金総額を計算して、
    その額 に労災保険率を乗じて算定します。
  •   ウ)ア)とイ)の労働者がいる場合
        ~ア)とイ)の労働者の賃金総額の合計額に労災保険率を乗じて算定します。

労災保険率の適用にあたっての留意点

  • ① 建設業は各工事の内容により保険料率が異なります。

契約書上の名称にとらわれず、完成されるべき工作物又は主たる事業により業種の種類を決定し、保険料率を適用することになります。  

  • ② 施主と直接請負契約を交わした元請工事(民間工事、少額工事、請負契約書の無い工事等すべて)であって、直接雇用の労働者または下請等事業場に労働者がいる場合は申告対象です。

また、共同企業体の場合は次のとおりとなります。

   ア)甲型(共同施工方式))で受注した工事

     ~単独有期事業として1工事ごとに別に申告が必要です。

   イ)共同企業体(乙型(分担施工方式))で受注した工事

     ~それぞれの会社の一括有期事業として申告します(請負金額が1億8千万

      円以上の場合は単独有期事業となります)。

  • ③ 業種の種類で特に注意が必要な工事等は次のとおりです。

・ 道路等の除雪作業、建築物の雪降ろし、除排雪作業は「37 その他の建設事業」です。
・ 既設建築物の外部での高所作業を伴う工事は「35 建築事業」、主に内部において行う設備工事等は「38 既設建築物設備工事業」です。
・ 工作物に使用されている資材をそのまま用いて再度使用することを前提として解体する工事は「35 建築事業」、上記に該当しないものは「37 その他の建設事業」です。
・ 水道本管等の布設工事(屋内建物への引込み工事のみの場合を除く)は「37その他の建設事業」です.