【一人親方労災】業務上外の認定基準

特別加入者の業務上外の認定基準について(労災保険法第37条関係)

昭和50年11月14日)
(基発671号)
(昭和52年3月28日)
(基発170号)
(平成3年4月12日)
(基発259号)
(平成13年3月30日)
(基発233号)
(平成14年3月29日)
(基発0329008号)

第1 業務上外の認定について 特別加入制度の趣旨はその業務の実情、災害の発生状況等に照らし実質的に労働基準法の適用労働者に準じて保護するにふさわしい者に対し労災保険を適用しようとするものである。
したがって、特別加入者の被った災害が業務災害として保護される場合の業務の範囲は、あくまでも労働者の行う業務に準じた業務の範囲であり、特別加入者の行う全ての業務に対して保護を与える趣旨のものではない。
一 特別加入者については次の場合に限り業務遂行性を認めるものとする。

(1) 中小事業主等(法第33条第1号及び第2号該当者)

イ 特別加入申請書(告示様式第34号の七)別紙の業務の内容欄に記載された所定労働時間(休憩時間を含むものとする。以下同じ。)内において、特別加入の申請に係る事業のためにする行為(当該行為が事業主の立場において行う事業主本来の業務を除く。)及びこれに直接附帯する行為(生理的行為、反射的行為、準備・後始末行為、必要行為、合理的行為及び緊急業務行為をいう。以下同じ。)を行う場合
(注1) 特別加入者が特別加入申請書に記載した労働者の所定労働時間内において業務行為を行っている場合は、労働者を伴っていたか否かにかかわりなく、業務遂行性を認めるものである。
(注2) 中小事業主等の特別加入者が事業主の立場において行う事業主本来の業務、たとえば、法人等の執行機関として出席する株主総会、役員会、事業主団体等の役員、構成員として出席する事業主団体の会議、得意先等の接待等(資金繰り等を目的とする宴会、親会社等のゴルフ接待等)に出席する行為は、労働者が行う業務に準じた業務ということはできないので、業務遂行性は認めないものである。したがって、たとえば、中小事業主が商談、集金等のため外出し、途中で事業主団体等の会議に役員、構成員として出席する場合は、商談、集金等の業務行為が終了した時点で業務遂行性は失われるものである。
(注3) 「直接附帯する行為」の業務遂行性の具体的判断は、労働者の場合に準ずるものとする。
ロ 労働者の時間外労働又は休日労働に応じて就業する場合
(注) 労働者の所定労働時間外における特別加入者の業務行為については、当該事業場の労働者が時間外労働を行っている時間の範囲において業務遂行性を認めるものである。
ハ イ又はロに接続して行われる業務(準備・後始末行為を含む。)を特別加入者のみ行う場合
ニ 上記イ、ロ及びハの就業時間内における事業場施設の利用中及び事業場施設内での行動中の場合
なお、この場合において日常生活の用に供する施設と事業用の施設とを区分することが困難なものについては、これを包括して事業場施設とみなすものとする。
ホ 当該事業の運営に直接必要な業務(事業主の立場において行う本来の業務を除く。)のために出張する場合
(注) 出張中の個々の行為の業務遂行性については、労働者に準じて判断するものである。たとえば、出張中の恣意的な行為、積極的な私的行為等については、業務遂行性は認められないこととなる。
ヘ 通勤途上であって次に掲げる場合
(イ) 事業主提供に係る労働者の通勤専用交通機関の利用中
(ロ) 突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上
(注) (イ)については、特別加入者が当該事業場の労働者のために提供している通勤専用交通機関に同乗している場合をいい、事業主の送迎車による出退勤、又は事業主所有の自動車等を特別加入者が運転して出退勤する場合は、これに該当しない。
(ロ)については、特別加入者が、台風、火災等に際し、自宅から就業場所へ建物の保全等のため緊急に赴く場合をいう。
ト 当該事業の運営に直接必要な運動競技会、その他の行事について労働者(業務遂行性が認められる者)を伴って出席する場合

(2) 一人親方等(法第33条第3号及び第4号該当者)

イ 建設業の一人親方等について
(イ) 請負契約に直接必要な行為を行う場合
(注) 請負契約締結行為、契約前の見積り、下見等の行為を行う場合
なお、自宅から直接下見現場等に赴く場合は、自宅から下見現場までの間については、通勤とみなされ業務遂行性は認められない。
(ロ) 請負工事現場における作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
(注) 建設業の一人親方については、請負契約に基づく工事について認められるものであるから、自宅の補修を行う場合は、業務遂行性は認められない。
「直接附帯する行為」については、中小事業主の場合に準じて判断するものとするが、作業中途において当該工事に必要な資材等を購入に行く行為等は必要行為に該当する。
(ハ) 請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
(注) 建設業の一人親方について特別加入を認めているものであるから、自家内作業場において請負契約によらないで製造又は販売を目的として建具等を製造している場合については、業務遂行性は認められない。
(ニ) 請負工事に係る機械及び製品を運搬する作業(手工具類(鋸、鉋、刷毛、こて等)程度のものを携行して通勤する場合を除く。)及びこれに直接附帯する行為を行う場合
(注1) 請負工事に係る機械及び製品を自宅から工事現場まで運搬する場合は、業務遂行性は認められるが、自宅から工事現場に赴く途中において、資材等を購入する場合は、自宅から資材店までの間は一般的に通勤とみられ、業務遂行性は認められない。しかし資材店から工事現場までの間については、業務遂行性が認められる。
(注2) 「直接附帯する行為」とは、前記「中小事業主等」(1)イに掲げる行為をいうが、この場合は、荷の積卸作業、運行中の自動車等の故障・修理等が該当する。
(ホ) 突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上
(注) 自宅から請負契約に係る工事現場へ赴くのは一般的に通勤であり、業務遂行性は認められないが、台風、火災等のため工事現場へ建物の保全等のため緊急に赴く場合は、業務遂行性を認めるものである。
ロ 個人タクシー営業者及び個人貨物運送事業者について
(イ) 免許を受けた事業の範囲内において事業用自動車を運転する作業(運転補助作業を含む。)、貨物の積卸作業及びこれらに直接附帯する行為を行う場合
(注) 特別加入者が営業免許を受けた事業の範囲内で、業務遂行性を認めるものであるから、家族等を一定場所まで送る行為、銀行等に融資をうけるために赴く行為については業務遂行性は認められない。
なお、白ダンプカー運転者については届出を行った事業の範囲内において業務遂行性を認めるものである。
(ロ) 突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上(注)自宅と車庫が離れている場合において、台風、火災等のため車庫の保全のため車庫に緊急に赴く場合は、特に業務遂行性を認めるものである。
ハ 漁船による自営漁業者について
(イ) 水産動植物の採捕、これに直接必要な用船中の作業及びこれらに直接附帯する行為を行う場合
(注) 漁船を用いて行う水産動植物の採捕の作業に限られるものであるから、漁船を用いずに行う水産動植物の採捕の作業は、これに該当しないが、漁場において漁船から下船し、海苔等を採取する行為は、該当する。
「これに直接必要な用船中の作業」とは、漁船の運航作業、漁船の修理作業等をいう。
「これに直接附帯する行為」とは、前記「中小事業主等」(1)イに掲げる行為をいうが、用船中における行為に限られるものである。
(ロ) 最終の発地から漁船まで、又は漁船から最初の着地までの間において行為を行う場合
(ハ) 突発事故による予定外の緊急の出勤途上
(注) 台風等のため自宅から漁船へ赴く場合及び漁船等を避難又は補強するための用船中の作業を行う場合、特に業務遂行性を認めるものである。
ニ 再生資源取扱業者について
別途通達する(昭和55)年3月31日付け労働省発労徴第22号・基発第156号通達((3)イ(イ)において「昭和55年通達」という。)の記の2(1)ニ参照)。

(3) 特定作業従事者(法第33条第5号該当者)

イ 特定農作業従事者について
(イ) 自営農業者が、農作業場において、動力により駆動される機械(以下「動力機械」という。)を使用して行う土地の耕作若しくは開墾、植物の栽培若しくは採取又は家畜(家きん及びみつばちを含む。)若しくは蚕の飼育の作業(以下「耕作等作業」という。)及びこれに直接附帯する行為を行う場合
なお、下記ロ(イ)のなお書き及び別紙は、特定農作業従事者たる自営農業者が委託を受けて行う作業について準用する。
(注1) 「農作業場」には、特別加入の対象となる事業場(ほ場、牧場、格納庫、農舎、畜舎、堆肥場、草刈り場、サイロ、むろ等の恒常的作業場等)のほか、他のほ場等を含み、主として家庭生活に用いる場所を除く。また、ほ場、牧場、格納庫、農舎、畜舎、恒常的作業場及び共同集荷施設(いわゆる野菜センター等)の相互間の合理的経路を含む。以下同じ。
(注2) 「直接附帯する行為」としては、例えば、耕作等作業中又は耕作等作業の前後において行う耕作等作業のための動力機械の点検・修理作業(日常行い得るものに限る。)、農産物を共同集荷施設までトラック等で運ぶ集荷作業(出荷作業と認められるものを除く。)、動力機械をほ場相互間において運転若しくは運搬する作業、苗・農薬・堆肥等を共同育苗施設等とほ場との間でトラック等で運搬する作業が、原則として、該当する。一方、例えば、労働者をほ場までマイクロ・バス等で送迎する作業、農産物を市場までトラック等で出荷する出荷作業、畜舎・農舎の建築作業等は、原則として、「直接附帯する行為」に該当しない。
(ロ) 農作業場の高さが2メートル以上の箇所において、耕作等作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
(注) 40度以上の傾斜地において、水平面から2メートル以上の高さにある箇所における作業を行う場合を含む。
なお、高さが2メートル以上ある畜舎・農舎の屋根の補修作業又は雪下ろし作業は、当該補修作業等が他に委託するよりも農業を行う者が通常行うべきものであって農作業に密接不可分な場合に限り、業務遂行性を認める。
(ハ) 農作業場の酸素欠乏危険場所における耕作等作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
(注1) 「酸素欠乏危険場所」とは、労働安全衛生法施行令別表第6第7号に規定するサイロ、むろ等をいう。
(注2) 「直接附帯する行為」としては、例えば、家畜の飼育のための飼料の醗酵・貯蔵又は土地の耕作のための堆肥の醗酵・貯蔵が、原則として、これに該当する。(ニ) 農作業場において農薬散布作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
(注) 「農薬」とは、農薬取締法(昭和23年法律第82号)第1条の2第1項に規定する薬剤であって、同法第2条第3項の規定により登録を受けたものをいう。
(ホ) 農作業場において牛・馬・豚に接触し又はそのおそれのある耕作等作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
(注1) 牛・馬・豚に接触し又は接触するおそれのある作業に限り、牛・馬・豚のいない畜舎内の清掃等の作業は含まない。
(注2) 「直接附帯する行為」としては、例えば、家畜を一箇所に集めるため檻等に追い込む作業が、原則として、これに該当する。
ロ 指定農業機械作業従事者について
(イ) 自営農業者が、圃場又は圃道の作業場において指定農業機械を用いて行う作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
ただし、動力脱穀機並びに動力カッター及びコンベヤー(昭和55年通達の記の二(2)ロ参照)を用いて行う作業については、圃場及び圃道以外の作業場で行う場合においても、業務遂行性を認めるものとする。 なお、この自営農業者が行う作業には、他人の圃場等において指定農業機械を用いて行う作業も含むものとするが、業務遂行性の迅速な認定に資するため、委託を受けて行う作業(共同作業、手間替しを除く。)については、事前に委託を受けた作業の内容を明らかにする書類を作成するよう指導するものとする。この指導は、別紙指導要領により実施すること。
(ロ) 当該機械を圃場等の作業場と格納場所との間において、運転又は運搬する作業(苗、防除用薬、堆肥等を共同育苗施設等から圃場等の作業場へ運搬する作業を含む。)及びこれに直接附帯する行為を行う場合
(注1) 他人の圃場等において指定農業機械を用いて行う作業であって、委託とされているものであっても、「委託者」の所有する機械又は「委託者」が第三者から借り受け(燃料等も委託者が調達し)た機械を「受託者」に使用させて作業を行わせるものである場合は、特別加入者としての業務遂行性を認める「委託を受けた作業」とは認められないこと。
(注2) (ロ)の「直接附帯する行為」とは、作業場と格納場所との間におけるトラクター等の修理、耕作機械、作物等の積卸作業等が該当する。
ハ 職場適応訓練生について
労働者の場合に準ずる。
ニ 事業主団体等委託訓練生について
別途通達する(平成元年3月23日付け労働省発労徴第19号・基発第135号通達の記の第2の2(5)参照)。
ホ 家内労働者について
別途通達する(昭和45年10月12日付け基発第742号通達の記の五の(1)参照)。
ヘ 労働組合等常勤役員について
労働組合等の常勤役員が、当該労働組合等の事務所、事業場、集会場又は道路、公園その他の公共の用に供する施設において、集会の運営、団体交渉その他の当該労働組合等の活動に係る作業(当該作業に必要な移動を含む。)を行う場合
(注1) 事業場とは、当該労働組合の組合員が属する企業の事業場に限らず、広く事業が行われている敷地内を指すものである。
(注2) 争議行為そのものが法律(労働関係調整法第36条、第38条、国営企業労働関係法、現行・特定独立行政法人等の労働関係に関する法律第17条第1項、国家公務員法第98条第2項、地方公務員法第37条第1項等)により禁止されている場合、当該争議行為を指導する作業は「当該労働組合等の活動に係る作業」に該当しないが、労働関係調整法第26条第4項、第37条第1項のような手続規定に違反した争議行為の指導作業は、原則として、これに該当する
ト 介護作業従事者について
別途通達する(平成13年3月30日付け基発第233号通達の記の第2の二(5)参照)。

(4) 海外派遣者(法第33条第6号及び第7号) 別途通達する(昭和52年3月30日付け労働省発労徴第21号・基発第192号通達の記の10(6)参照)。

二 業務起因性の判断は、労働者の場合に準ずるものとする。
三 業務上外の判断についての留意点
疾病に係る業務上外の判断のために就業時間の把握を行う場合は、当該特別加入者が客観的に就業したことが明らかな時間を就業時間とすること。