労災保険法における「特別加入者」の解釈について(労災保険法第33条関係)

労災保険法における「特別加入者」の解釈について(労災保険法第33条関係)

労災保険法における「特別加入者」の解釈について(労災保険法第33条関係)

(昭和40年11月1日)
(基発1454号)
(昭和49年2月13日)
(基発72号)
(昭和49年3月25日)
(基発151号)
(平成3年3月1日)
(発労徴13号・基発123号)
(平成3年4月12日)
(基発259号)
(平成11年2月18日)
(基発77号)
(平成11年12月3日)
(基発695号)
(平成13年3月30日)
(基発233号)
(平成23年3月25日)
(基発0325第6号)
(平成25年3月1日)
(基発0301第1号)
(平成25年8月1日)
(基発0801第14号)
(平成25年11月18日)
(基発1118第2号)

一 趣 旨
労災保険は、労働者の業務災害に対する補償を本来の目的としているが、業務の実情、災害の発生状況等に照らし、実質的に労働基準法適用労働者に準じて保護するにふさわしい者に対し、労災保険の適用を及ぼそうとするものである。

二 特別加入者の範囲
特別加入をすることができる者の範囲については、全面適用を目途とする中小事業の保険加入の促進と事務組合の普及に資するため、一定の中小事業主とその事業に従事する者をその対象とするほか、特に自営業者については、業務の危険度、業務の範囲の明確性ないし特定性(業務上外の認定等保険関係の技術的処理の可能性)等を考慮し、その範囲を定めたものである。その具体的範囲は、次のとおりである。
(1) 中小事業主等(法第33条第1号及び第2号)
イ 中小事業主(法第33条第1号、則第46条の16)
特別加入をすることができる中小事業主は、常時300人(金融業、保険業、不動産業又は小売業にあっては50人、卸売業又はサービス業にあっては100人)以下の労働者を使用する事業主であって、事務組合に労災保険事務の処理を委託するもの(事業主が法人その他の団体であるときは、代表者)である。
(イ) 事業主の使用労働者数の算定は、
第1の四(1)イ【お事務組合に労災保険事務の処理を委託することができる事業主は、その使用する労働者の総数が、常時300人(金融業、保険業、不動産業又は小売業にあっては50人、卸売業又はサービス業にあっては100人)以下の事業主である。したがって、2以上の事業を行なう事業主にあっては、各事業の使用労働者数を合計した数によって判断すべきことはいうまでもない。】と同様である。したがって、個々の事業の使用労働者数が常時300人、50人又は100人以下であっても、使用労働者の総数が常時300人、50人又は100人をこえるときは、その事業主は、特別加入をすることができない。
(ロ) 常時300人、50人又は100人以下の労働者を使用する事業主は、通年1人の労働者を使用する事業主はもちろんのこと、労働者の通年雇用を行なわない事業主であっても、年間において相当期間にわたり労働者を使用することを常態とするものも含まれるが、労働者についての保険加入を前提とする制度の趣旨及び法第33条第3号の規定との関連からいって、労働者を使用しないことを常態とする事業主は含まれない。
(ハ) 数次の請負による建設の事業の下請事業を行なう事業主も、特別加入の趣旨から、法第33条第1号の「事業主」として取り扱うこととする。
(ニ) 金融業、保険業、不動産業、卸売業、小売業又はサービス業の業種の区分については、第1の四(1)ロ【金融業、保険業、不動産業、卸売業、小売業又はサービス業の分類は、日本標準産業分類によることとする。この場合、清掃業、火葬業、と畜業、自動車修理業及び機械修理業はこれらの業種に含めないで取り扱うこととする。なお、2以上の異種事業を行なう事業主にあっては、それぞれの事業に使用する労働者数を考慮して、いずれの業種に属するかを判断するものとする。】に準じて判断するものとする。
ロ 中小事業主が行なう事業に従事する者
事業に従事する者とは、労働者以外の者で事業に常態として従事する者を予定したものである。事業主が法人である場合にあっては、代表者以外の役員のうち、労働者に該当しないものも、これに含まれる。なお、法人役員一般の取扱いについては、昭和39年3月3日付基発第273号通達を廃止し、改めて別途通達する。
(2) 一人親方その他の自営業者とその事業に従事する者
イ 一人親方その他の自営業者(則第46条の17)
一人親方その他の自営業者であって特別加入をすることができる者は「自動車を使用して行なう旅客又は貨物の運送の事業」、「建設の事業(土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業をいう。以下同じ。)」、「漁船による水産動植物の採捕の事業」、「林業の事業」、「医薬品の配置販売の事業」又は「再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業」を労働者を使用しないで行なうことを常態とする者である。
労働者を使用しないで行なうことを常態とする者は、前記(1)イ(ロ)により常時労働者を使用する者以外の者をいうものとして取り扱う。したがって、たまたま臨時に労働者を使用することがあっても妨げない。
(イ) 自動車を使用して行なう旅客又は貨物の運送の事業を労働者を使用しないで行なうことを常態とする者には、通常個人タクシー業者及び個人貨物運送業者が該当する。
(ロ) 建設の事業を労働者を使用しないで行なうことを常態とする者には、大工、左官、とび、石工等いわゆる一人親方が該当するが、特に職種は限定しないこととする。
(ハ) 漁船による水産動植物の採捕の事業を労働者を使用しないで行なうことを常態とする者は、漁船に乗り組んでその事業を行なう者に限られる。
(ニ) 林業の事業、医薬品の配置販売の事業又は再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者については、別途通達する(昭和51年9月29日付け労働省発労徴第60号・基発第697号通達の記の一(2)及び昭和55年3月31日付け労働省発労徴第22号・基発第156号通達(六(2)チにおいて「昭和55年通達」という。)の記の二(1)イ参照)。
ロ 一人親方その他の自営業者が行なう事業に従事する者
労働者以外の者で当該事業に常態として従事する者を予定したものである。
(3) 特定作業従事者(法第33条第5号)
イ 特定農作業従事者(則第46条の18第1号イ)
別途通達する(平成3年4月12日付け労働省発労徴第38号・基発第259号通達(以下「平成3年通達」という。)の記の第1の二(1)及び(2)参照)。
ロ 指定農業機械作業従事者(則第46条の18第1号ロ)
小規模農家を含めた自営農業者については、その業態の特殊性、災害発生状況が的確に把握されていない現状等を考慮し、重度の傷害を起こす危険度が高いと認められる種類の農業機械を使用する一定の農作業に従事する者に限ることとした。
(イ) 対象となる農業機械は、動力耕うん機その他の農業用トラクター、動力溝掘機、自走式田植機、自走式防除用機械、自走式収穫用機械、自走式運搬用機械、動力揚水機、動力草刈機、動力カッター、動力摘採機、動力脱穀機、動力剪定機、動力剪枝機、チェーンソー、単軌条式運搬機、コンベアーである(昭和40年労働省告示第46号)。
(ロ) 指定農業機械を使用する農作業の範囲は、土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽培若しくは採取の作業に限られ、養蚕、畜産等の作業を含まない。
ハ 職場適応訓練生(則第46条の18第2号イ)
別途通達する(昭和41年12月26日付け基災発第29号通達参照)。
ニ 事業主団体等委託訓練生(則第46条の18第2号ロ)
別途通達する(平成元年3月23日付け労働省発労徴第19号・基発第135号通達(以下「平成元年通達」という。)の記の第2の二(1)参照)。
ホ 家内労働者(則第46条の18第3号)
別途通達する(昭和45年10月12日付け基発第742号通達(以下「昭和45年通達」という。)の記のニの(3)、昭和49年3月23日付け労働省発労徴第17号・基発第142号通達の記の三及び昭和50年3月29日付け基発第174号通達の記の四参照)。
ヘ 労組常勤役員(則第46条の18第4号)
別途通達する(平成3年通達の記の第2の二(1)、(2)及び(3)参照)
ト 介護作業従事者(則第46条の18第5号)
別途通達する(平成13年通達の記の第2の二(1)及び(2)参照)
(4) 海外派遣者(法第33条第6号及び第7号)
別途通達する(昭和52年3月30日付け労働省発労徴第21号・基発第192号通達(以下「昭和52年通達」という。)の記の一〇参照)。

三 中小事業主等の特別加入手続
(1) 事務組合に対する労災保険事務の処理の委託(法第33条第1号)
特別加入をすることができる中小事業主は、事務組合に対し労災保険事務の処理を委託する者に限られる。
(2) 加入申請(法第34条、則第46条の19、告示様式第34号の7)
イ 中小事業主の特別加入は、その使用する労働者に関して成立する保険関係を基礎とし、かつ、労働者以外でその事業に従事する者との包括加入を前提として認められるものであるから、任意適用事業にあっては、労働者について任意加入の申込みをしないままに中小事業主のみ特別加入することはできない。なお、任意加入の申込みと特別加入の申請とは同時に行なうことができる。
ロ 同一の中小事業主が2以上の事業についてそれぞれ保険加入をし、事務組合に労災保険事務の処理を委託しているときは、当該事業主及びその事業に従事する者は、一の事業のみについて特別加入することができるのはいうまでもないが、2以上の事業について重ねて特別加入をすることも妨げない。
ハ 中小事業主の行なう事業に従事する者は、当該中小事業主とともに包括加入をすることになるが、その具体的範囲は附款及び申請書により確定することとし、申請書に登載されていない者は、特別加入者として扱わない。もちろん、申請書に登載されていても、法第33条第2号に該当しない者は、特別加入として扱うことはできない。 したがって、中小事業主及びその事業に従事する者に異動等があった場合には、その旨を遅滞なく、届け出るよう指導されたい(則第46条の19第6項、告示様式第34号の8)。
(3) 業務の内容(則第46条の19第1項第3号、告示様式第34号の7)
中小事業主及びその事業に従事する者については、その業務の範囲を明確にし、業務上外の認定の適正を期するため、申請書について、各人の業務の内容を具体的に明記させるよう指導されたい。
(4) 特別加入の承認等の手続
イ 承認通知
特別加入の申請に対する所轄都道府県労働基準局長【現行・都道府県労働局長】の承認は、当該申請の日の翌日から起算して14日の範囲内において申請者が加入を希望する日とすることとし、その通知は、別添一の通知書(特様式第1号)により行うこととする。
ロ 不承認通知
特別加入の申請に対する不承認通知は、別添二の通知書(特様式第3号)により行うこととする。
ハ 変更通知
則第46条の19第6項(則第46条の23第4項及び則第46条の25の2第2項により準用する場合を含む。)により届出のあった事項のうち、加入時健康診断を必要とする特別加入者の行う業務内容の変更及び特別加入者の追加については、当初の特別加入の承認の内容の要素となる事項の変更であり、当該当初の特別加入の承認の変更決定がなされない限り効果が生じないため、所轄都道府県労働基準局長【現行・都道府県労働局長】は、当該変更内容を適当と認めるときは、当該届出の日の翌日から起算して14日の範囲内において当該届出を行う者が変更を希望する日付けにより承認内容変更決定を行うこととする。なお、その通知については、当分の間、添付一の通知書(特様式第1号)により行うこととする。
ニ 変更内容の不承認
上記ハの場合において、所轄都道府県労働基準局長【現行・都道府県労働局長】が当該変更内容を不適当と認めるときは、その旨の通知を別添二の通知書(特様式第3号)により行うこととする。

四 一人親方その他の自営業者とその事業に従事する者の特別加入手続
(1) 一人親方その他の自営業者とその事業に従事する者(以下「一人親方等」という。)の特別加入については、一人親方その他の自営業者の団体を任意適用事業主とみなし、一人親方等を労働者とみなして、任意適用事業の保険関係と全く同じ仕組みによることとしている(法第35条第1項第1号以下)。この場合において、当該団体は、すべて継続事業として取り扱うこととする。なお、当該団体の要件等については、後記六(2)によられたい。
(2) 加入申請(法第35条第1項、則第46条の23、告示様式第34号の10)
一人親方等の特別加入手続に関し、特に留意すべき事項は、次のとおりである。
イ 加入者(則第46条の23第1項第4号)
一人親方等についても、前記三(2)ハと同様に、保険関係の有無は附款及び申請書により確定することとし、特別加入団体構成員又はその構成員の行なう事業に従事する者であっても、申請書に登載されていない者は、特別加入者として取り扱わない。もちろん、申請書に登載されていても、法第33条第3号及び第4号に該当しない者は、特別加入者として取り扱うことはできない。
したがって、一人親方等に異動があった場合には、その旨を遅滞なく届け出るよう指導されたい(則第46条の23第4項、告示様式第34号の8)。
ロ 業務の内容(則第46条の23第1項第4号、告示様式第34号の10)
一人親方等については、その業務の範囲を明確にし、業務上外の認定の適正を期するため、申請書について各人の業務又は作業の内容を具体的に明記させるよう指導されたい。
ハ 業務災害防止措置(則第46条の23第2項)
一人親方等については、その災害防止についての規制措置が未整備であり、そのままの状態で特別加入を認め、補償を行なうことには問題がある。このため、一人親方その他の自営業者の団体に対しては、あらかじめ業務災害の防止に関し当該団体が構ずべき措置及び一人親方等が守るべき事項を定めなければならないこととしている。これらの措置及び事項について定めがない場合には、特別加入の承認をしないこととする。
ニ 従来の一人親方団体の取扱いについて
特別加入制度の創設に伴い、従来擬制して保険関係の成立を認めてきた建設の事業の一人親方の団体については、可及的すみやかに新制度に移行させるよう指導されたい。
(3) 特別加入の承認等の手続
上記三(4)と同様とする。

五 特定作業従事者及び海外派遣者の特別加入手続
特定作業従事者及び海外派遣者の特別加入手続は、次のことを除いて、一人親方等の手続と同様である。
(1) 特定農作業従事者
別途通達する(平成3年通達の記の第1の二(4)参照)。
(2) 指定農業機械作業従事者
イ 災害防止措置
加入申請書に添付させるべき業務災害防止措置の内容を記載した書類に関し、一般的事項を別途通達する。
ロ 労働者に係る保険関係成立手続の確保
特別加入申請書別紙に記載される特別加入予定者が、当該特別加入に係る事業につき労働者を使用していることが明らかとなった場合は、既に労働者に係る保険関係成立届が提出されている場合を除き、特別加入の申請又は特別加入者の追加に関する上記の三の(4)のハと同時に労働者に係る保険関係成立届を提出させることとし、提出がなされない場合は特別加入の承認又は上記の三の(4)のハに基づく承認内容変更決定を行わないこと。
(3) 職場適応訓練生
職場適応訓練の作業が他の労働者の作業とともに行われるのが通常であり、かつ、当該事業場には労働基準法、労働安全衛生規則等が適用されるので、加入申請書における作業内容の記載及び業務災害防止措置の内容を記載した書類の添付を要しないものとして取り扱われたい。
(4) 事業主団体等委託訓練生
別途通達する(平成元年通達の記の第2の二(2)参照)。
(5) 家内労働者
別途通達する(昭和45年通達の記の三参照)。
(6) 労組常勤役員
別途通達する(平成3年通達の記の第2の二(5)参照)。
(7) 介護作業従事者
別途通達する(平成13年通達の記の第2の二(3)参照)。
(8) 海外派遣者
別途通達する(昭和52年通達の記の一〇(2)参照)。

六 特別加入承認の基準
(1) 中小事業主等の場合
中小事業主等については、当該事業の労災保険事務が事務組合に委託されることのほか、特別加入の承認について特段の制約はないが、当該事業を労働者を使用しないで行なうことを常態とする事業主及びその事業に従事する者については、制度の趣旨及び法第33条第3号との関連からいって、加入を認めないこととする(前記二(1)イ(ロ)参照)。
(2) 一人親方等及び特定作業従事者の場合
一人親方等及び特定作業従事者の特別加入の承認は、次のすべての基準に適合する場合に行なう。
イ 加入申請者たる団体は、一人親方その他の自営業者又は特定作業従事者の相当数を構成員とするものであること(連合団体は、これに該当しない。)。これに一応該当するものとしては、例えば、全国個人タクシー連合会加盟の単位団体、従来から擬制加入を認めてきた建設の事業の一人親方団体、漁業協同組合、農業協同組合等が考えられる。なお、職場適応訓練生の団体については、別途通達する。
ロ 当該団体は、法人であると否とを問わないが、構成員の範囲、構成員たる地位の得喪の手続等が明確であること。その他団体の組織運営方法等が整備されていること。
ハ 当該団体の事業内容が労災保険事務の処理を可能とするものであること。
ニ 当該団体の事務体制、財務内容等からみて、労災保険事務を確実に処理する能力があると認められること。
ホ 当該団体の地区が、その主たる事務所の所在地を中心として労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第6条第2項第4号に定める区域に相当する区域をこえないものであること。
ヘ 加入申請書の添付書類に記載する業務又は作業の内容は、次の範囲内において各人の業務又は作業の具体的内容を明らかとするものであること。なお、職場適応訓練生については、前記五後段のとおりであること。
(イ) 自動車を使用して行なう旅客の運送の事業を行なう者及びその事業に従事する者にあっては、免許を受けた事業の範囲内において旅客を運送するために事業用自動車を運転する業務
(ロ) 自動車を使用して行なう貨物の運送の事業を行なう者及びその事業に従事する者にあっては、免許を受けた事業の範囲内において貨物を運送するために事業用自動車を運転する業務(運転補助業務を含む。)及びこれに直接附帯する貨物取扱いの業務
(ハ) 建設の事業を行なう者及びその事業に従事する者にあっては、その者の職種の範囲内において「請負契約の目的たる仕事の完成のために行なう業務」
(ニ) 漁船による水産動植物の採捕の事業を行なう者及びその事業に従事する者にあっては、水産動植物の採捕のために漁船に乗り組んで行なう業務
(ホ) 指定農業機械作業従事者にあっては、その使用する農業機械の種類
ト 一人親方その他の自営業者の団体及び特定作業従事者の団体が定めるべき業務災害の防止に関する措置については、次のとおり取り扱うこと。
(イ) 自動車を使用して行なう旅客又は貨物の運送の事業にあっては、道路交通法、道路運送法、道路運送車輛法等により安全に関する規制が行なわれているので、業務災害の防止に関する措置の内容を記載した書類の添付は原動機付自転車を使用するバイク便事業者がいない団体に限り、必ずしも必要でない。
(ロ) 漁船による水産動植物の採捕の事業にあっては、乗組員の選任、船内作業の安全衛生その他漁船の航行の管理に関する事項を含むものであること。
(ハ) 建設の事業及び特定作業従事者の作業については、別途通達するところによること。
チ 再生資源取扱業の一人親方等については、別途通達する(昭和55年通達の記の二(1)ロ及びハ参照)。

七 特別加入の制限(法第35条第2項、則第46条の19第3項等)
一人親方等及び特定作業従事者については、一定の加入制限がある。すなわち、旅客自動車運送事業、貨物自動車運送事業、建設の事業、漁船漁業、指定農業機械作業及び職場適応訓練の作業区分により、同種の事業又は作業については、2以上の団体の構成員となっていても、重ねて特別加入することができない。異種の事業又は作業について2以上の団体に属し、重ねて特別加入することは差し支えない。
また、特別加入を希望する者のうち一定の者について特別加入をする際に健康診断の受診を義務付け、検診結果によっては特別加入を制限することとなっているが、これについては別途通達する(昭和62年3月30日付け基発第175号通達参照)。
さらに、指定農業機械作業従事者及び特定農作業従事者のうち労働者を使用する者については、当該労働者に係る保険関係成立届を提出しない場合に特別加入を制限することになっている(上記五(2)ロ及び平成3年通達の記の第1の二(4)へ参照)。
なお、指定農業機械作業従事者、特定農作業従事者及び農業の中小事業主等に係る三つの特別加入の関係については、平成3年通達の記の第1の三(2)を参照されたい。
八 特別加入者たる地位の消滅
(1) 脱退(法第34条第2項、法第35条第3項、法第36条第2項、則第46条の21、則46条の25の3、告示様式第34号の8)
イ 特別加入した中小事業主は、政府の承認を受けて脱退することができる。脱退の承認申請は、特別加入の承認申請の場合と同様に、労働者以外の者で当該事業に従事する者を包括して行なわれなければならない。なお、脱退の承認の通知は、別添三の通知書(特様式第1号の2)により、承認年月日は当該特別加入の脱退の申請の日から起算して14日の範囲内において申請者が脱退を希望する日とする。脱退の承認があったときは、当該承認の日の翌日に特別加入者たる地位が消滅するものとして取り扱う。また、脱退の不承認の通知は、別添四の通知書(特様式第3号の2)により行うこと。
ロ 特別加入した一人親方等、特定作業従事者及び海外派遣者についても、上記イと同様である。
(2) 特別加入承認の取消し等(法第34条第3項、法第35条第4項、法第36条第2項、則第46条の22、則第46条の25、則第46条の25の3)
中小事業主又は一人親方その他の自営業者若しくは特定作業従事者の団体若しくは海外派遣者が、労災保険又は同法施行規則の規定に違反した場合において、政府が特別加入の承認を取り消し、又は保険関係の消滅をさせたときは、特別加入者たる地位はその時に消滅する。
特別加入の承認の取消又は保険関係の消滅の通知は、別添五の通知書(特様式第4号)により行うこと。
(3) 自動消滅
イ 特別加入者が法第33条各号に掲げる者に該当しなくなったときは、それらの者に該当しなくなった時に特別加入者たる地位は、自動的に消滅する。
ロ 中小事業主等の特別加入は、その使用する労働者について成立している保険関係の存在を前提として認められるものである(法第34条第1項)から、当該保険関係が消滅したときは、その消滅の日に特別加入者たる地位も、自動的に消滅する。

ハ 一人親方等及び特定作業従事者は、これらの者が特別加入に係る団体の構成員又はその構成員の行なう事業に従事する者である限りにおいて特別加入を認められるものである(法第35条第1項)から、当該団体の構成員である特別加入者が当該団体の構成員でなくなったときは、その団体の構成員でなくなった時にその者及びその者の行なう事業に従事する者の特別加入者たる地位は、自動的に消滅する。
ニ 一人親方等又は特定作業従事者の団体の解散があったときは、その解散の日の翌日に特別加入者たる地位は、自動的に消滅する。

九 業務上外の認定(法第37条、則第46条の26)
特別加入者の業務又は作業(職場適応訓練等の作業を除く。)の内容は、労働者の場合と異なり、労働契約に基づく他人の指揮命令により他律的に決まるものではなく、当人自身の判断によっていわば主観的に決まる場合が多いから、その業務又は作業の範囲を確定することが通常困難である。このことは、法第33条第1号及び第3号該当者において特に著しい。
このため、特別加入者の業務災害については、一般的な基準の設定が本省局長に委任されたのであり、特別加入者についての業務上外の認定は、加入申請書記載の業務又は作業の内容を基礎とし、本省局長作成の基準に従って行なうこととなる。この基準については、別途通達する。

一〇 保険給付
(1) 特別加入者も労働者とみなされ、法第3章第1節及び第2節並びに第3章の2の規定による保険給付等を受けることができるが、休業補償給付については、所得喪失の有無にかかわらず、療養のため「業務遂行性が認められる範囲の業務又は作業について」全部労働不能であることがその支給事由となるものである。
(注) 全部労働不能とは入院中又は自宅就床加療中若しくは通院加療中であって、上記の業務遂行性が認められる範囲の業務又は作業ができない状態をいう。
たとえば、建設業の一人親方が請負工事現場(自家内作業場を含む。)における作業及び請負契約のための下見等業務遂行性が認められる行為が行えないことが客観的に認められる場合は、休業補償給付が支給されることとなる。
(2) 保険給付を受ける権利は、その者が特別加入者でなくなっても、変更されない(法第34条第4項、法第35条第5項、法第36条第2項)。

一一 給付基礎日額(法第34条第1項第3号、法第35条第1項第6号、法第36条第1項第2号、則第46条の20、第46条の24、則第46条の25の3)
(1)  特別加入者は賃金を受けないので、その給付基礎日額は、労働大臣が定めることとされているが、具体的には、3,500円、4,000円、5,000円、6,000円、7,000円、8,000円、9,000円、10,000円、12,000円、14,000円、16,000円、18,000円、20,000円、22,000円、24,000円及び25,000円のうちから、都道府県労働基準局長が定める(則第一条第一項)。なお、家内労働者等については、当分の間、2,000円、2,500円、3,000円の給付基礎日額も認められる(労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成5年労働省令第5号)附則第2条第3項)。
(2) 給付基礎日額については、事務簡素化の見地からは、事務組合又は一人親方その他の自営業者若しくは特定作業従事者の団体ごとに額が統一されることが望ましいが、具体的決定にあっては、特別加入者の希望を考慮し、実情に即するよう配慮されたい(告示様式第34号の7、告示様式第34号の10、告示様式第34号の11)。
(3) 給付基礎日額は、加入承認時における決定の後、必要に応じて改定することもできるが、少なくとも1年間は固定しておくこととし、改定にあたっては、あらためて希望を徴することとする。

一二 支給制限
 支給制限については、特別加入者が、労働者とみなされることにより、法第12条の2の2の規定が適用される。具体的な運用の基準については、別途通達する(昭和40年12月6日付け基発第1591号通達の記の第2参照)。

一三 保険料
(1) 保険料率
イ 中小事業主等については、それらの者がその事業に使用される労働者とみなされるから、当然、その事業についての保険料率が適用される。
ロ 100人以上の労働者を使用する継続事業に対するメリット制の適用にあたっては、その事業について特別加入した中小事業主等も労働者数に算入される。
ハ 一人親方等及び特定作業従事者については、一人親方その他の自営業者及び特定作業従事者の団体ごとに則別表第10(特別加入事業保険料率表)に定める保険料率が適用される。
(2) 賃金総額
賃金総額の算定にあたっては、各特別加入者の給付基礎日額に応ずる「賃金総額の算定の基礎となる額」(則別表第5右欄) を用いる。具体的な算定方法は、次のとおりである。
イ 中小事業主等の場合
(イ) 継続事業にあっては、当該年度における特別加入者各人の「賃金総額の算定の基礎となる額」を合計し、これを労働者の賃金の総額と総計したものが、その事業の賃金総額となる。なお、「賃金総額の算定の基礎となる額」は、当該保険年度における当該特別加入者の特別加入期間及び稼働期間の長短にかかわらず、則別表第5右欄に定める額による。
(ロ) 有期事業にあっては、特別加入者ごとに、その特別加入期間の年数(暦に従って計算した年数)を別表第5右欄の「賃金総額の算定の基礎となる額」に乗じて得た額がその者の「賃金総額の算定の基礎となる額」となる。その場合、別表第5右欄の額に乗ずべき年数は、特別加入期間が1年未満であるときは1年とし、1年をこえ2年未満であるときは2年とし、2年をこえ3年未満であるときは3年とし、以下同様とする(則第26条の2第2号)。このようにして算定した各人の「賃金総額の算定の基礎となる額」を合計し、これを労働者の賃金の総額と総計したものが、その事業の賃金総額となる。
ロ 一人親方等及び特定作業従事者の場合
特別加入に係る一人親方その他の自営業者又は特定作業従事者の団体は、いずれも継続事業として取り扱われるから、当該年度における特別加入者各人の「賃金総額の算定の基礎となる額」を合計したものが賃金総額となる。この場合においても、「賃金総額の算定の基礎となる額」は、当該保険年度における当該特別加入者の特別加入期間及び稼働期間の長短にかかわらず、則別表第5右欄に定める額による。
ハ 前記イ及びロにかかわらず、昭和41年3月31日までに特別加入をした事業(有期事業を除く。)又は団体については、別表第5右欄の「賃金総額の算定の基礎となる額」の12分の1の額に特別加入の承認があった日から昭和41年3月31日までの月数を乗じて得た額が、当該事業又は団体に係る特別加入者の「賃金総額の算定の基礎となる額」となる(改正省令附則第2項)。
ニ 一人親方及び特定作業従事者の「賃金総額の算定の基礎となる額」は、これらの者の稼働率が区々であるにもかかわらず定額制をとっているが、この点については、保険料率の面において考慮し、公平を図っていることはいうまでもない。
(3) 保険料の納付
イ 特別加入の承認を受けた中小事業主等は、その事業に使用される労働者とみなされるので、中小事業主は、労働者とみなされる中小事業主自身及びその事業に従事する者に係る部分の保険料とその事業の本来の労働者に係る部分の保険料とを一括して納付する義務を負う。
ロ 一人親方等及び特定作業従事者に係る保険料については、特別加入の承認を受けたこれらの者の団体が任意適用事業及びその事業主とみなされ、かつ、これらの者は当該事業に使用される労働者とみなされるので、当該団体が事業主としてその納付義務を負う。団体のみが直接かつ最終的な納付義務者となるわけであるから、納付の督促、延滞金の賦課滞納処分等の保険料徴収に関する措置は、団体に対してのみ行なうことができる。なお、当該団体が構成員等から保険料相当額をいかなる方法で徴収するかは、団体の内部問題である。