職人さんを一人親方(外注)に変更したときのリスクとは?

雇用から一人親方(職人)に変更しても。でも実態は…

会社側から「来月から社員じゃなくて一人親方の取扱いに変更するからよろしくね!」と簡単に社員(雇用関係)から一人親方に変更した経験らどうなるでしょうか?
会社から見ると、雇用関係を締結せず一人親方として独立させることで、その者の労働時間の管理が不要となることや労働保険、社会保険料削減などのメリットがあるようです。
しかし、これまでとなんら変わらず労働者のときに同じような働き方であれば、一人親方(外注)として認められません。
形式的に請負契約や委任契約を締結しても、実態が労働者であれば「偽装請負」と見られ、法律上で禁止されている違法就労となります。
「偽装請負」となれば罰則を受けるだけでなく、建設業許可が取消になる可能性もありますので慎重に対応することが必要です。

一人親方(外注)が従業員(労働者=雇用関係)となる具体例

大工(建設作業員)としての採用募集を見て面接を受けました。無事採用され大工としてA社と請負契約を締結しました。しかし、実際の働き方は以下のようなものでした。

1)A社との請負契約中に他社の仕事をしたことがありませんでしたまた、他社との請負契約はできませんでした。
2)A社の現場では大工職人としての仕事の他、ブロック工事など他の仕事にも従事していました
3)A社より勤務時間の指定はありませんでしたが、朝8:00に事務所で仕事の指示を受けてから夕方17:00まで拘束され、それ以降の作業には手当が支給されました。
4)現場では依頼されていた工事以外の他の仕事も時間が空いたら頼まれて対応していました。
5)現場監督からの報告や指示により、A社から指揮監督を受けていました。
6)作業道具は自分の所有物でしたが、必要な資材等の調達はすべてA社が負担していました。

このようなケースでは、A社と実質的な使用従属関係があると認められ、大工さんとA社との契約は「請負契約」ではなく「労働契約」であると認定されます。
そうなることで、労災保険の適用を受けるほかに社会保険の適用、労働時間の管理など通常の従業員と同じ取扱いが必要になります。

適切に労災保険に加入していない会社は…

事業主への保険料の遡及・追徴金の徴収

会社が労災保険の手続きを怠っていた場合は、最大2年間さかのぼった労働保険料及び10%の追徴金が徴収されます。

給付された費用の徴収

事業主が「故意」または「重大な過失」により労災保険への加入手続きを行わないときは、療養を開始した日(即死の場合は事故発生日)の翌日から3年以内に給付された労災給付の、全部または一部を事業主から徴収されます。(療養補償給付及び介護保障給付は除きます。)

行政機関から指導を受けたにもかかわらず、労災保険の加入手続きを行わない場合

⇒労災事故が起こる前に A社が労災保険の加入手続を行うように都道府県労働局から指導を受けていましたが、指導後も労災保険の加入手続を行いませんでした。

この場合、A社が「故意」に手続きを行わないものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の100%を徴収されます。

労災保険の適用事業になったときから1年を経過してなお手続きを行わなかった場合

⇒A社が、労災事故が起こる前に労災保険の加入手続を行うように都道府県労働局から指導を受けたことはありませんでしたが、労災保険の適用事業となってから 1 年を経過しており、その後も手続を行わない場合

この場合、A社が「重大な過失」により手続きを行わなかったものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の40%を徴収されます。