一人親方(建設業を営んでいる個人事業主)が従業員を雇うときに必要な手続きは?

独立して一人親方として仕事をしている人が、事業拡大により従業員を雇用しようか検討することがあります。

はじめて従業員を雇用する際には、これまで必要なかった手続きが必要となるため、忘れないようにしなければなりません。

このような手続きは従業員のためでもあり、また雇用した事業主のためにも重要な意味があるものです。どのような手続きが必要となるのでしょうか。

一人親方?一人親方とは=建設業の個人事業主

「一人親方」という言葉が一般的によく使われます。この一人親方とは、一般的に建設業などの業種に携わる個人事業主を指します。

個人事業主であるため、会社に雇用されている従業員や労働者とは異なります。そのため、一人親方は雇用保険に加入することができず、また最低賃金や労働時間などの保護を受けることもありません。ただ、実態としては元請け会社の指示のもと、仕事を請け負っているだけというケースもあります。

一人親方自身やその従業員に関して、労働保険や社会保険の環境整備が重視されています。

一人親方が従業員を雇用したときには、必ず労働保険に関する手続きは必要となるため、忘れないことが重要です。

従業員を雇ったときに必要な届け出(手続き)

雇用保険への加入

従業員を1人でも雇っている場合、法人・個人事業主を問わず、原則として雇用保険への加入義務が発生します。以下の2つの条件を満たしているなら、正社員・契約社員・アルバイト・パートなど、雇用形態に関係なく加入しなければなりません。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上である
  • 31日以上の雇用見込みがある

初めて雇用保険に加入する場合、従業員を雇用した日から10日以内に労働基準監督署、もしくはハローワークへ届出を行なう必要があります。

雇用保険に加入しなかったり、手続き漏れが発生していたりする場合、追徴金や懲役といったペナルティを課されるため、確実に手続きを済ませましょう。

労災保険(中小事業主向け)への加入

一人親方は労働者ではなく個人事業主ですが、仕事内容や被災状況を踏まえた「特別加入制度」によって労災保険に加入できます。

 しかし、年間100日以上労働する従業員を雇う場合、そもそも一人親方の定義から外れてしまうため、労災保険の特別加入も認められなくなるのです。

 このような場合、一人親方は中小事業主という立場となり、中小事業主用の労災保険に切り替えたうえで、従業員と一緒に加入する必要があります。

ただ、この特別加入をするためには、労働保険事務組合に事務処理を委託しなければなりません。

社会保険への加入が必要なケースも

従業員が加入する公的保険制度には、他に社会保険(健康保険・厚生年金)があります。

【社会保険加入義務要件】

5人以上の従業員を雇う場合、個人事業主として社会保険(健康保険・厚生年金)に加入させなければなりません。

一方、従業員が5人未満の場合、国民健康保険や建設国保にそれぞれ従業員個人で加入してもらう必要があります。

また、法人として事業を行っている場合には、社会保険は強制的に適用されます。

人を雇うタイミングで助成金の活用も可能

建設業者さんが従業員を雇用するときは、その雇用に対する助成金を申請して活用するチャンスでもあります。

たとえば、キャリアアップ助成金正社員化コースというものがあります。