近年はさらに未加入対策を強化されています。
国土交通省では、建設業界の社会保険加入100%を目指して、建設業者への社会保険加入の指導を進めてきました。
このことを受け、未加入業者への現場への立ち入り拒否など、未加入業者の一掃が現実に発生しているようです。
つまり、社会保険加入は建設業の仕事を続けていくには、避けられない状況となっているようです。
そして、建設業許可申請や経営事項審査の場合においても、加入の有無をチェックされる状況になってきています。

社会保険加入はなぜ義務化されたのか?

労働力の確保が、大きな要因です。
以前は、建設業界は、若年層の労働者が多く集まり、大変働き甲斐ある業界のひとつでした。しかしながら、現在では、建設業界の魅力が大きく薄れてしまっています。このままでは、優秀な技術力の継承もままならない状況になってしまいます。そこで、国全体で、建設業界の技術力低下を防止するために、社会保険加入を義務付けるようになりました。

社会保険等への未加入は、技能労働者の処遇の低下など就労環境を悪化させ、若年入職者が減少する一因となっています。そして、若年入職者の減少により、経験の積み重ねによって磨かれる技能を熟練者から若者へと承継することが困難となり、建設産業自体の持続的発展が妨げられることになります。
一方、法律を守らない保険未加入企業の存在によって、適正に法定福利費を負担し、人材育成を行っている真面目な企業ほどコスト高となり、競争上不利になるという矛盾した状況が生じています。

一人親方や作業員は、社会保険等に加入していないと現場に入れないと聞いたが。

事業者である一人親方については、企業にただちに直接雇用することが求められるものではありませんが、他の技能労働者と同様 に、必要な保険(国民健康保険、国民年金)へ加入するよう促していく必要があります。

一方、保険加入を徹底すると、技能労働者を雇用する企業にとって法定福利費の負担が増えることから、これを避けるために社員の 雇用関係を解消して一人親方(事業者)とし、その一人親方と請負関係を結ぶ企業が出ています。

このような企業の都合による1人親方化は、就労環境の改善のために進められている保険未加入対策に逆行するもので、関係法令 に違反する違法行為です。
企業の都合で形式的に請負関係にしたとしても、その実態が雇用関係である場合には請負人とは認められず、健康保険法や厚生年 金保険法の適用にあたって雇用関係があるものとして取り扱われます。このため、企業の法定福利費負担が軽くはならず、むしろ、保険料未納によるペナルティを受けることにもなりかねません。

雇用関係にあると認められる者については、無理に一人親方にせず、適正に雇用関係を結ぶべきです。

一人親方も社会保険に加入しなければならないのか?

個人事業主としての一人親方であれば、労働者を雇用しない個人事業主である以上、健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の適用対象にならないのが原則です。

個人で「国民健康保険」「国民年金」に加入することになります。基本的に健康保険(協会けんぽ)、厚生年金保険及び雇用保険の加入義務はありません。
※詳細な要件については、年金事務所又はハローワーク等にお問い合わせください。

請負としての働き方に近い一人親方とは?

請負とは、民法では「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」契約としています(法632条)。

つまり、仕事の完成を目的とした請負契約を結んで働くことになります。建設工事、運送業務などで請負という働き方があり、相手方は仕事の取引先あるいは顧客という関係になります。あくまで個人事業主であるため、社会保険は馴染みません。

しかし、個人事業主を対象とした社会保険はあります。医療保険では、国民健康保険か建設連合国民健康保険組合のどちらかに加入する必要があります。

国民健康保険は、市町村と都道府県が運営する保険制度であり、自治体によって保険料や計算方法などが異なっています。

建設連合国民健康保険組合は、建設業従事者や一人親方向けに公的医療保険を運営しています。

年金については国民年金に加入しなければなりません。

労働者としての働き方に近い一人親方とは?

労働基準法では、労働者とは「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定めています(法9条)。

ここでいう「使用される」とは、指揮命令を受けて労務を提供することを意味します。「労働者」に該当するか、それとも「事業者」に該当するかは、労働の実態によって判断される必要があります。

一般的に、一人親方は、請負を前提とした働き方をしており、誰かに使用されているわけでもなく、賃金が支払われているわけでもない事業者ですので、労働者には当たりません。

一人親方といっても、全ての工事現場で事業者に該当し労働者に該当しないというわけではなく、社会保険等の法律の適用に当たっても、業務遂行上の指揮監督の有無、専属性の程度など、その時の仕事の実態に応じて労働者なのか請負人なのか判断されることになります。

実態として、一人親方が現場で仕事先の監督を受け、その指示のもとで働くなど、労働基準法上の労働者と変わらないケースはあります。その場合、労働者性が認められれば、法律上の個人事業主である一人親方ではなく、労働者と判断されます。

健康保険などの労働者の社会保険に加入する必要があり、仕事先は労働者を雇用する事業所として社会保険に加入させる義務があります。

健康保険について、建設国保組合などの国民健康保険組合に入っている人も協会けんぽに入り直さないといけないのか?

協会けんぽの被保険者とならない5人未満の従業員を使用する事業主や一人親方などであって、現在既に建設業に係る国民健康保険組合(※)に加入している者については、既に必要な健康保険に加入しているものとして取り扱われるものであり、社会保険等未加入対策上、改めて協会けんぽに入り直すことは求められていません。
本来加入することとされている医療保険の適用が確認できれば支障ありません。

(※)国民健康保険組合は、同種の事業又は業務に従事する者を組合員として、国民健康保険事業を運営することが認められた保険者であり、国民健康保険法上の公法人です(現在では新設は認められていません)。

他の会社はどうしてるのか?

法人の場合、または労働者を5人以上雇用している場合は加入をしています。

労働力確保のために社会保険に加入している事業主もいます。
「こんなに経営状況が厳しいなか、よその会社は加入しているの?」などのご質問をよくお受けします。現状では、許可申請書の提出時に未加入の場合は、後日、加入指導書が来ます。この段階で、ようやく事態に気づき、多くの事業所が加入手続を検討する事業所も少なくないです。

ただでさえ少ない給料から保険料を引かれたら生活できないのだが?

社会保険等は、失業や老後の無収入、病気や怪我といった暮らしの中で避けがたいリスクを、社会全体で支えてくれる仕組みです。みんなでリスクを支える必要があるため、その加入は法律上の義務となっていますが、このセーフティネットを利用することは国民の権利でもあります。
これらの保険による様々な給付は、加入することによって初めて利用することができます。給付のための費用は、加入する労働者が負担する保険料はもちろんですが、事業主が負担する保険料(法定福利費)、さらには公の税金も投入されていますので、総じて見れば、一人で暮らしの中の様々な避けがたいリスクに備えるよりも手厚い給付を受けることができると言えます。
保険料の支払は確かに負担ではありますが、失業や老後の無収入、病気の時の高額な医療費負担に備えるためにも、社会全体で支え合う社会保険等に加入しておくことが是非とも必要です。

社会保険加入の指導書が届いたらどうすれば、よいのか?

すぐに対応すべきです。
加入指導書が来てしまった場合、至急対応をお願いします。指導書を受けてしまった場合は、早急に報告をする必要があります。

また、建設業許可の新規取得や更新の際に提出する許可申請書に、社会保険の加入状況を記載した書面を添付する措置が設けられました。

許可申請書を提出する際に社会保険に未加入であっても許可が取れないということではないですが、文書による指導を受け、その後、加入状況の報告を求められることになります。

指導を受けたのにもかかわらず社会保険に加入しない場合には、厚生労働省の保険担当部局へ通報されることになります。

その後、保険担当部局から加入指導が行われ、それでもなお加入しない場合には、強制加入手続きが行われることになります。

この場合、過去2年にさかのぼって保険料が徴収されることになりますので、強制加入手続きに入る前に自主的に社会保険に加入するようにしましょう。

元請から社会保険加入を言われたが・・どうすればよいか?

加入をしないと仕事が来なくなる可能性も・・
まず、法人の場合、または労働者を5人以上雇用している場合、社会保険は、いわゆる任意保険ではありません。加入が義務付けられている事業所は、前提として「法令上加入しなければならない」のは当然です。そして、元請業者は、施工体制台帳を作成し、下請業者やその労働者の保険加入状況を確認し、未加入の場合には加入するよう指導することになっています。つまり、指導に従わない下請業者に対して、「工事を発注しない」という選択をする可能性も否定できません。

建設業許可の更新、経営事項審査の時期が、近づいているが・・大丈夫か?

期限に間に合うかも含め、すぐに対応しましょう。

経営事項審査では社会保険への未加入は大幅にその評点の減点対象となるばかりか、公共工事の入札では未加入業者への入札参加資格を与えない自治体・団体がほとんどです。さらに民間工事であっても元請ゼネコンより社会保険加入を義務付けられており加入しないと現場に入れない下請協力会社も多いのではないでしょうか。

当然こちらは『建設業許可』の取得とは別問題ですが、未加入業者への風当たりが強いことを肌で感じておられる事業者様は多いと思います。

社会保険加入のメリットはあるのか?

最大のメリットは、優秀な人材の確保につながります。
社会保険加入の最大のメリットは、優秀な人材の確保だと思われます。会社が持続して成長していくには、優秀な人を雇い入れて、しかも定着してもらう必要があります。当然、働く側の労働者としては、家族の分までカバーされる社会保険にしっかりと入れる会社を選びます。ましては、人手不足の状況下では、社会保険に加入していない会社に来る可能性は、大変低いと思われます。

加入をしないと、どのような影響が出るのか?

仕事が来なくなる可能性も否定できません。
国土交通省と建設業界全体で、社会保険未加入問題の解消を進めています。そして、多くの事業所さまが、社会保険の加入に舵を切りました。そのような状況で、加入をしないという選択肢は、仕事が来なくなる可能性もゼロとはいえません。

すぐにでも、社会保険加入をオススメします。

従業員4人以下の個人事業主なのだが、法人化して厚生年金等に切り替えなければならないのか。元請から法人化して社会保険に加入しろと言われている。

従業員4人以下の個人事業主であれば、健康保険と厚生年金保険は「適用除外」となり、雇用保険へ加入していれば、社会保険等未加入とはなりません。
適用除外の方を無理に加入させる取組ではなく、法人化して加入するといったことを行う必要はありません。

「未加入」と「適用除外」は違うのか?

「未加入」とは、社会保険等の加入届出の義務がありながらそれを履行していない場合となります。
社会保険等の加入届出の義務のない者は「適用除外」とし、社会保険等未加入建設業者となりません。
建設国保に加入し、協会けんぽの適用除外承認を受けている場合は、健康保険は「適用除外」となります。

健康保険、厚生年金保険、雇用保険の被保険者でない者は全ての建設工事の現場から排除されるということか。一人親方や作業員は、社会保険等に加入していないと現場に入れないと聞いたが。

今回の取組は、社会保険等の法令に基づき事業所として社会保険等未加入の建設業者との下請契約を原則禁止するというものですので、現場入場を認めないという取組ではありません。
すなわち、法令により適用除外となる者(一人親方等)や加入企業に所属する(個人負担保険料未納の)作業員を個別に排除するものではありません。

※国土交通省が策定した「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」において、現場入場の取扱いについて記載がありますので、適切に対応することになります。

加入義務のない者も加入していなければ下請負人になれないのか?

加入義務のない方に加入を求めているものではありません。
加入義務がない保険については「適用除外」となります。3つ全てが「加入」か「適用除外」であれば、下請負人になれます。
下請契約の相手とできないのは、一つでも「未加入」の記載がある場合です。

元請企業に求められる保険未加入者の排除措置はどのようなものでしょうか?

事業者である一人親方については、企業にただちに直接雇用することが求められるものではありませんが、他の技能労働者と同様 に、必要な保険(国民健康保険、国民年金)へ加入するよう促していく必要があります。

一方、保険加入を徹底すると、技能労働者を雇用する企業にとって法定福利費の負担が増えることから、これを避けるために社員の 雇用関係を解消して一人親方(事業者)とし、そ一1人親方と請負関係を結ぶ企業が出ています。

このような企業の都合による一人親方化は、就労環境の改善のために進められている保険未加入対策に逆行するもので、関係法令 に違反する違法行為です。

社会保険への加入を進め、未加入者を排除するためには、元請企業においては、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」に沿って、下請企業の保険加入を確認・指導することが求められます。

具体的には、施工体制台帳(再下請負通知書を含む)や作業員名簿を用いて、下請企業やその労働者の保険加入状況を確認し、未加入の場合には加入するよう指導することになります。

協力会社組織がある場合には、将来的に保険未加入の協力会社とは契約しないことや、保険未加入の建設労働者の現場入場を 認めないことを見据えつつ、協力会社を指導することも求められます。

なお、遅くとも平成29年度以降においては、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の全部又は一部について、適用除外でないにもかかわらず未加入である建設企業は、

  • (1)下請企業として選定しないとの取扱いとすべきであること
  • (2)適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべきであること

がガイド ラインで求められており、これを見据えた対応も必要となりますので、今の段階からすべての下請企業を適切な保険に加入したものに 限定した工事を試行的に実施して、その取組を拡大することや、作業員についても、工事の規模等に鑑みて可能である場合には、すべての作業員を適切な保険に加入したものに限定した工事を試行的に実施することが望まれます。

企業の都合で形式的に請負関係にしたとしても、その実態が雇用関係である場合には請負人とは認められず、健康保険法や厚生年 金保険法の適用にあたって雇用関係があるものとして取り扱われます。このため、企業の法定福利費負担が軽くはならず、むしろ、保険料未納によるペナルティを受けることにもなりかねません。
雇用関係にあると認められる者については、無理一人親方にせず、適正に雇用関係を結ぶべきです。