一人親方など、従業員以外の安全確保も事業者側が義務を負うことになります。

過去に建材として使用されていたアスベスト(石綿)が原因で、元建設作業員に健康被害が生じている問題について、国と建材メーカーに賠償を求める訴訟で初めての最高裁判決が2021年5月17日に言い渡されました。

 判決では、労働安全衛生法の一部規定で特別管理物質を取り扱う作業場という「場所の危険性」に着目していることから、その場所で危険にさらされるのは労働者に限らないことを考慮し、一人親方などについても保護する趣旨と解釈するのが相当とされました。

 そのため厚生労働省は、危険な有害作業を伴う事業者に、作業を請け負う一人親方や、同じ場所で作業を行う労働者以外の人についても一定の保護措置を義務づける省令改正に踏み切った。

2021年5月17日最高裁判決
建設作業に従事してアスベスト(石綿)を吸い込み、健康被害を受けた元作業員やその遺族が国や建材メーカーに損害賠償を求めた集団訴訟に関する統一判断を示した。
同判決では、物や場所の危険性に着目した労働安全衛生法の一部規定は、事業者が自ら雇用する労働者だけでなく、一人親方や中小事業主も保護する趣旨と解するのが相当であるとし、労働大臣(当時)がこれらの規制権限を行使しなかったことは、著しく合理性を欠くものであったと国の責任を認めた。

新たに義務付けられた保護措置について周知を図っていく

危険な有害作業とは、労働安全衛生法第22条に関して定められている、労働安全衛生規則や有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則など11の省令で、労働者の健康障害防止のために保護措置の実施が義務付けられている作業(業務)など。

 具体的には、事業主が作業の一部を請け負う一人親方や下請け業者に対して、局所排気装備などの設備を稼働させるなど配慮する

  • (1)安全確保のために設置した設備(例えば、有害物質の発散を抑制する局所排気装置)について、請負人のみが作業する場合等も稼働・使用できるよう配慮義務を新設
  • (2)作業方法の遵守や保護具の使用等の必要性を請負人にも周知させる義務を課す
  • (3)危険な場所への立ち入り禁止や事故発生時の退避等について、労働者以外の者(請負人や当該場所で他の作業に従事する者)も措置の対象とする――などの省令改正を考えている(23年4月1日施行予定)。

 厚労省では事業主と一人親方の方々に向け、省令改正によって義務付けられた保護措置について周知を図り、スムーズな施行につなげたい考え。